デジタル教科書とは|学校教育法改正で何が変わるのかを整理

2026年6月、紙とデジタルそれぞれの良さを生かした教科書づくりを可能とする「学校教育法等の一部を改正する法律」が成立しました。1

今回の改正により、これまで紙の教科書を前提としていた教科書制度に、デジタルを含む新たな教科書が位置づけられることになります。

一方で、「紙の教科書はなくなるのか」「家庭の負担は増えるのか」「子どもの学習環境にどのような影響があるのか」と不安に感じる保護者もいるかもしれません。

この記事では、デジタル教科書とは何か、学校教育法の改正で何が変わるのか、保護者や学校現場が確認しておきたい点を整理します。

デジタル教科書とは?

現在のデジタル教科書は「教科書代替教材」

現在使われている学習者用デジタル教科書は、紙の教科書の内容を端末上で表示できる教材です。

制度上は、紙の教科書そのものではなく、紙の教科書を補う「教科書代替教材」として位置づけられています。2

そのため現在は、学校では紙の教科書を基本にしながら、必要に応じてデジタル教科書を併用する形がとられています。

紙の教科書をタブレットで見るだけのものではない

今回の改正後に想定されるデジタルを含む教科書は、紙面をタブレットに表示するだけのものではありません。

英語の音声、理科の実験動画、動かして確認できる資料など、デジタルならではの機能を教科書の内容に組み込めるようにすることが想定されています。

紙とデジタルの良さを組み合わせる点が大きな特徴です。

学校教育法改正で何が変わるのか

デジタルを含む教科書が制度上の「教科書」になる

今回の学校教育法改正では、デジタルな形態を含む教科書も、制度上の「教科書」として位置づけられるようになります。

これまでは紙の教科書が基本で、学習者用デジタル教科書は補助的な教材として扱われていました。

改正後は、紙だけでなく、デジタルを含む教科書も発行・使用できる仕組みになります。3

動画・音声なども検定対象の「教科書内容」に

改正後は、動画や音声などのデジタルコンテンツを、教科書の一部として扱えるようになります。

これまでも二次元コードから動画や資料を見ることはありましたが、それらは教科書ではなく「教材」とされ、教科書検定の直接の対象ではありませんでした。

教科書の一部になることで、デジタル部分も内容の正確性や質を確認する仕組みに入る点が大きな違いです。 4

義務教育ではデジタルを含む教科書も無償給与の対象に

小学校や中学校などの義務教育段階では、教科書は無償で配られています。

今回の改正では、デジタルな形態を含むものも「教科書」として位置づけ、使用義務や検定・採択、無償給与などの対象とすることが示されています。

ただし、無償給与の対象となるのは教科書部分です。

端末や通信環境、家庭での利用方法、故障時の扱いなどは、今後の制度設計や自治体・学校の説明を確認する必要があります。

紙の教科書はなくなるのか?

今回の改正は、紙の教科書をすぐに廃止するものではありません。

目的は、紙だけを前提としてきた教科書制度に、デジタルを含む教科書も位置づけられるようにすることです。

改正後は、教科や学年、学習内容に応じて、紙の教科書、デジタルを含む教科書、紙とデジタルを組み合わせた教科書など、複数の形が考えられます。

たとえば、基本は紙で学びながら、音声や動画が必要な部分はデジタルで確認する使い方も想定されます。

ただし、実際にどのような形で使われるかは、今後の制度設計や自治体・学校の方針を確認する必要があります。

保護者が知っておきたいポイント

家庭で使う場面はどこまであるのか

デジタル教科書が導入されても、学校だけで使うのか、家庭学習でも使うのかによって、保護者が確認すべき点は変わります。

家庭で使う場合は、端末の持ち帰り、充電、通信環境、利用時間、故障時の扱いなどが関係します。

学校から説明があった際は、「家庭で何を準備する必要があるのか」を確認しておくと安心です。

目や姿勢、長時間利用への配慮も必要

デジタル教科書の活用が広がると、授業や家庭学習で端末を使う場面が増える可能性があります。

そのため、画面との距離、姿勢、明るさ、休憩の取り方など、健康面への配慮も重要です。5

家庭でも、長時間連続して使わない、明るい場所で使う、姿勢を確認するなど、無理のない使い方を意識することが大切です。

紙の教科書だけでは学びにくい子どもの支援につながる可能性もある

デジタル教科書の機能や音声教材などは、紙の教科書だけでは学びにくい子どもを支える手段の一つになる可能性があります。6

たとえば、次のような子どもが対象として想定されています。

  • 発達障害等により、文字や図形の認識が難しい子ども
  • 肢体不自由等により、紙の教科書を読むことが難しい子ども
  • 日本語に通じないことにより、教科書の文字や図形の理解に困難がある子ども7

文字の拡大、音声読み上げ、表示の調整などにより、学習内容にアクセスしやすくなる場合があります。

ただし、すべての子どもに同じ効果があるわけではないため、子どもの状況に応じた使い方や支援体制が重要です。

学校現場で課題になりそうな点

端末トラブル時の対応

デジタル教科書を使う場合、端末の故障、充電切れ、通信障害、ログインできないといったトラブルが授業に影響する可能性があります。

そのため、予備端末の用意、紙の資料での代替、ネットワーク障害時の対応など、授業を止めないための備えが必要です。8

制度上使えるようになることと、安定して使える環境が整うことは分けて考える必要があります。

教員の準備や授業設計

デジタル教科書は、導入すれば自動的に授業が分かりやすくなるものではありません。

動画や音声、表示機能をどの場面で使うのか、紙の教材やノート、話し合い活動とどう組み合わせるのかを考える必要があります。

教員が機能を理解し、授業の目的に合わせて使えるようにするための研修や準備も課題です。

自治体・学校による運用差

端末の整備状況、通信環境、教員研修、家庭への説明内容は、自治体や学校によって差が出る可能性があります。

同じ制度改正でも、実際の使い方や導入時期、家庭での利用ルールは地域によって異なることがあります。

保護者としては、国の制度だけでなく、通っている学校や自治体の方針を確認することが大切です。

情報セキュリティと個人情報保護

デジタル教科書や関連サービスを使う場合、ログイン情報、利用履歴、学習に関する情報などの扱いにも注意が必要です。

学校で使う端末やアカウントは、授業だけでなく、さまざまな学習活動に使われることがあります。

そのため、不正アクセスや情報漏えいを防ぐ管理、アカウントの扱い、外部サービス利用時の確認など、情報セキュリティの視点も欠かせません。

今後確認したいこと

大臣指針や検定基準の内容

今後は、デジタルを含む教科書について、どのような内容を教科書として認めるのか、動画や音声などをどのように検定するのかが整理されていきます。

教科書検定の基準は、文部科学省が専門的な審議を踏まえて定めるもので、学校や自治体が個別に決めるものではありません。9

今後は、国が示す大臣指針や、文部科学省が専門的な審議を踏まえて定める検定基準の内容を確認する必要があります。

いつから学校で本格的に使われるのか

改正法の施行日は、令和9年4月1日とされています。10

ただし、これは制度上の施行時期であり、同日からすべての学校でデジタルを含む教科書が本格使用されるという意味ではありません。

教科書が学校で使われるまでには、作成、検定、採択、供給の流れがあります。

実際の使用時期は、今後の検定基準や採択の流れ、自治体・学校の方針を確認する必要があります。

自治体・学校からの説明内容

デジタルを含む教科書の導入が進む場合、保護者にとって重要なのは、国の制度だけでなく、実際に通っている学校でどのように運用されるかです。

学校や自治体から説明があった際は、次の点を確認しておくとよいでしょう。

  • どの教科・学年で使うのか
  • 紙の教科書も併用するのか
  • 学校だけで使うのか、家庭学習でも使うのか
  • 端末は学校配布か、家庭で用意する必要があるのか
  • 家庭で通信環境が必要になるのか
  • 端末の故障・紛失時はどう対応するのか
  • 画面を見る時間や姿勢への配慮はあるのか
  • 学習履歴やアカウント情報などの個人情報はどう扱われるのか
  • 紙の教科書だけでは学びにくい子どもへの支援はあるのか

制度上の変更点だけで判断せず、家庭での使い方や子どもへの配慮まで含めて確認することが大切です。

まとめ

今回の学校教育法改正は、紙の教科書をすぐに廃止するものではありません。

大きなポイントは、これまで紙を前提としていた教科書制度に、デジタルを含む新たな教科書を位置づけることです。

動画や音声などを教科書の一部として扱えるようになり、デジタル部分も検定の対象とすることで、子どもたちの学びの充実と、教科書としての質の担保を図ることが目指されています。

一方で、端末環境、通信環境、長時間利用への配慮、情報セキュリティ、自治体ごとの運用差など、今後確認すべき点もあります。

保護者としては、「紙がなくなるのか」という不安だけで受け止めるのではなく、子どもの学習環境がどう変わるのか、学校からどのような説明があるのかを確認していくことが大切です。


脚注

  1. 文部科学省「『学校教育法等の一部を改正する法律案』が参議院本会議で可決され成立しました」 ↩︎
  2. 文部科学省「学習者用デジタル教科書について」 ↩︎
  3. 文部科学省「『学校教育法等の一部を改正する法律案』が閣議決定されました」 ↩︎
  4. 文部科学省「『学校教育法等の一部を改正する法律案』が参議院本会議で可決され成立しました」 ↩︎
  5. 文部科学省「学校教育法第三十四条第二項に規定する教材の使用について定める件の一部を改正する件の公布及び施行等について」 ↩︎
  6. 文部科学省「音声教材」 ↩︎
  7. 文部科学省「音声教材の概要」 ↩︎
  8. 文部科学省「学校教育法第三十四条第二項に規定する教材の使用について定める件の一部を改正する件の公布及び施行等について」 ↩︎
  9. 文部科学省「教科書検定の方法」 ↩︎
  10. 文部科学省「『学校教育法等の一部を改正する法律案』が参議院本会議で可決され成立しました」 ↩︎

参考資料

文部科学省「『学校教育法等の一部を改正する法律案』が参議院本会議で可決され成立しました」
https://www.mext.go.jp/b_menu/activity/detail/2026/20260610.html

文部科学省「『学校教育法等の一部を改正する法律案』が閣議決定されました」
https://www.mext.go.jp/b_menu/activity/detail/2026/20260407.html

文部科学省「学習者用デジタル教科書について」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/seido/1407731.htm

文部科学省「学校教育法第三十四条第二項に規定する教材の使用について定める件の一部を改正する件の公布及び施行等について」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/seido/1412813_00001.htm

文部科学省「音声教材」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/1374019.htm

文部科学省「音声教材の概要」
https://www.mext.go.jp/content/20250724-mext_kyokasyo01-000043470-04.pdf

文部科学省「教科書検定の方法」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/gaiyou/04060901/1235089.htm

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